→マメガムシはカエルに食べられても9割以上が肛門から生きて脱出できる
→脱出は足を使った能動的な移動で肛門を目指している
→食べられた後に生存への活路をみいだす種は非常にまれであるカエルに食べられても90%の確率で生きて肛門(総排出腔)から脱出する虫がいると判明しました。
ほとんどの虫にとって、カエルの粘り気のある舌にからめとられて口に入ると、死が確定します。
しかしマメガムシと呼ばれる水生の小さな昆虫は違いました。
マメガムシはあらゆるカエルの捕食と消化に耐え、食べられた後にカエルの肛門からの脱出をはかっていたことがわかりました。
多くの生物が「食べられる前」を想定して進化してきたのに対して、マメガムシは「食べられた後」に活路を見出していたのです。
しかもこの活路は以前に紹介した「鳥に食べられた魚卵の生存確率(0.2%)」のような微かな希望ではなく、生存率90%という圧倒的なものでした。
それでは、以下で実験に至る経緯と過程、及びマメガムシの奇妙な進化について紹介していこうと思います。
■はじめて発見された「食べられた後」の能動的脱出者
神戸大学の生態学者である杉浦准教授は、カエルが昆虫を食べる様子を観察するのを日課にしていました。
いくつかの昆虫はカエルに嘔吐をうながす成分を持っており、カエルによる捕食を回避することができると分かっています。
杉浦氏はこの昆虫の持つ捕食回避能力に注目しており、様々な昆虫をカエルに食べさせ嘔吐反応が起こるかを確かめていたのです。
ある日、杉浦氏はカエルのエサにマメガムシを選びました。
マメガムシは日本の水田に棲む水生の昆虫で、同じく水田に棲むカエルにとってはエサになりえます。
ですが杉浦氏がマメガムシを与えたカエルを観察していると、カエルに与えたはずのマメガムシが、総排出腔(肛門)から抜け出し、走り去っていく様子を確認できたそうです。
これまでの捕食にかかわる研究は、被捕食者が「食べられる前」に焦点をあてて行われてきました。
そのため、食べられた後についての研究は進んでおらず、知られているカタツムリや魚卵などの脱出例も、全て捕食者の行う排泄にあわせた受動的な脱出ばかりでした。
しかし杉浦氏が目撃したマメガムシが脱出していく様子は極めて能動的だったのです。
よって目撃した行動が正しければ、この小さな発見が捕食後の能動的脱出を行う生物の、最初の例になる可能性があるのです。
問題は、どうやって証明するかでした。
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